『春がくるときのよろこびは
あらゆるひとのいのちをふきならす
笛のひびきのやうだ
(萩原朔太郎)

誰かのために努力することも、とても大切。
でも、私が私としてちゃんと機能する環境をつくること。
それも、同じくらい大切なんじゃないかと思った。

ピンポイントでいい。
「ここ」と感じる一点を守る。
そこを軸に、つま先を置いてみる。
もう片足ではみ出したり、少し向こうまで足を向けてみたり。
でも、つま先はしっかりと、ここにつけておくから大丈夫。
そんな「軸足」を持つということ。
そして、その自分の軸足を、信じきるということ。

ドラマや映画では、40代や50代の大人が、
若い主人公の目標になっていたりする。
(理想とはほど遠い大人も、たまにはいるけれど。)
でも私、あの域に達するには、まだまだだなと感じる。
中堅の年齢になって気づいたのは、
気持ちや魂って、案外、子どものころと変わらないってこと。
もし成長したとすれば、
世間の波をちょっとだけ、うまくかわす術を覚えたくらい。

最近は、60代から留学したり、定年後に趣味を見つけたり。
年齢を重ねても、挑戦している人たちがたくさんいて、ほんとうに素敵だなあと思う。
年齢に関係なく、葛藤はあるし、迷うし、悩む。
自分の胸ぐらを掴みたくなるくらいに自分に絶望もするし、弱さだらけで、涙が止まらない夜もある。
でも、隠してしまうんだな、
涙も、気持ちも。
「大人らしさ」を取りつくろうために。

その強さは、なんだろう。
きっとそれは、
「軸足」を持っている人の強さなんだと思う。
評価とか、順位とか、
そんなものの追いつかない、もっと遠くを目指す、冒険のようなもの。
満開の桜の下。
ふと足元に目を落としたとき、
地面に張り巡らされた根が目に入る。
見えないところで、しっかりと張り巡らされている。
その根があるから、風にも揺れながら咲いていられる。

不思議とあらゆる方向から、チャレンジングな空気が流れこんでくる。
だって、春だから。

今日も、だれかの春が流れる。

笛のひびきのように。
