いい時代だ、なんて言わない。
たぶん、そんなに簡単なものじゃない。
時代が変われば、空気の色も変わるけれど、その分、新しい重さも生まれてくる。
ひとつの「正解」に向かって足並みをそろえるよりも、それぞれの歩幅で立っていられることが、昔と
比べると少しずつ許されてきたように思う。
でもそのかわりに、 「あなたはどうしたいの?」が、前よりずっとシビアに問われるようになった。
それって、やさしさのようでプレッシャーだったりもする。
あなたの見ている景色は、私にはわかりきれない。
だから、うなずくくらいしかできないけれど。
私たちは、 「これが正解」ってものを持っているように見えて、実は、迷子になっていたりする。
だからもし、目の前にカーブがあって、どっちに曲がろうか迷ったら、いっしょに体をちょっと傾け
るくらいのことはできると思う。
あ、そっちだね、って、目線を重ねるような感じで。
私がここで書いてることなんて、所詮、たわごとだと思う。
でもね、
そうやって時々たわごとをこぼしながら、いっしょに歩いているんだよ、ってことだけは、どこかの
風にまぎれて届いたらうれしい。
世の中は、勝ち逃げだけを考えてる人ばかりじゃない、
そう知ってもらえたら、うれしいなと思う。
たとえば、そうだな、
電車でいつも決まった車両に乗ってる乗客くらいに、会話はないけど、いつもそこにいる。
全部を信じる必要はないし、
無理に希望を持たなくてもいいけれど、
時々「悪くないかもな」って思える夜があるだけで、
人って案外、生きていけたりする。
少し離れた場所で、ひとりで読んでいるかもしれないあなたへ。