【ひととき】何もないけど満たされる時間

読んで、後に何も残らない文章、掴めない感覚。
それって、まるで意味のないことのように思えるかもしれません。
でも、私はそういう文章が好きです。

例えば、スキー場で食べるカレーや、お祭りで食べるほこりっぽい焼きそばを思い出してみます。
あの味って、どうしてあんなに美味しいのだろう。

それは、その場所で、その時に食べるからこそ、美味しさが引き立っていると思うのです。
スキー場のカレーも、お祭りの焼きそばも、その場の空気感やみんなで食べる雰囲気が、普通の日常では味わえない特別な一瞬を作り出しています。

もし、美味しいカレーや焼きそばが食べたければ、ちゃんとしたレストランで食べた方が間違いなく味は良いです。

けれども、いつの日か思い出す温かい記憶は、やはりお祭りやスキー場でのあの瞬間の味だったりするのです。

私たちの記憶の中で「美味しい」と感じる時間は、単なる味覚だけでなく、その時その場所での体験や感情も含まれています。

それは、人生の文脈とも言えるでしょう。

文章においても同じことが言えます。
文章そのものだけではなく、その文章を読んでいる時の周囲の環境や状況、その時の気持ち、そしてその文章が心に触れた瞬間の体験も含まれるのです。

私は、そんな文脈を連ねたいと思っています。

読んでいる時は、サーっと流れていくような文字群かもしれません。
読み終えて「何が書いてあったんだっけ?」となる。

けれど、それで良いと思っています。

読んでいるその瞬間に、何かしらの感触や心地よさを感じていられるのなら、それが私の目指すところだからです。

一般的な書き手にとっては、読者の記憶に残らない文章を書くことはタブーとされるかもしれません。
でも、私はこのサイトに文字を綴り、文章を目で追いながらサラサラと読んで、「ああ、良い時間を過ごしたな」と思うことに満足したいです。

そして、

「良い文章を読んだな」よりも、
「なんだか良い時間をすごせたな」
と思ってもらえる場(空間)を作りたいと考えています。

そんなことを目指して、これからも更新を続けていきたいと思います。

「愛」とか「幸せの…」と近寄ったら熊よけの素敵な鐘でした

私たちが日々の生活の中で感じる小さなうれしさ、それらを思い起こさせる文脈。
たとえば、土曜日の朝に飲むコーヒーの香りや、夕暮れ時に感じる涼しい風。
そんな日常のひとコマが、ふとした瞬間に思い出されるような空気。

特別な何かを語ることではなく、むしろ何気ない日常の中にある光を見つけるような体感を、形にして届けたいです。

私の視点が誰かの心に触れ、何かしらの温かい気持ちや、ほっとするひと時を提供できれば、それが私のモチベーションにつながります。

そんな思いを込めて、一つ一つを紡いでいきます。
このサイトを訪れるたびに、心地よい時間が流れるように。

文字という感覚を通じて、
広い日常にやわらかな肌感や、実態のない「なんかいい」を届けられますように。